このシリーズは、当初「5部構成」と書いていました。第5弾は「定点観測編」として、これまでの判断軸の運用結果を数値で検証する、と。
ですが、順番を入れ替えます。本記事(第5弾)は、その数値が出る土台として先に行った「基盤の移し替え」の実録です。数値の答え合わせ ── 順位や流入がどう動いたか ── は、次回の第6弾「定点観測編」に回します。移行の数週間後でないと、意味のある比較ができないからです。
記事を「足す」前に、土台を移した
第3弾で、私は「足す前に、判断軸を作り直す」と書きました。その次にやったことは、新しい記事を書くことではありませんでした。サイトの土台を、WordPress から Astro(+Cloudflare Pages)へ全面的に移すことでした。
理由は単純です。移行とコンテンツの大改編を同時にやると、何が効いたのか分からなくなる。63%減からの再構築で一番避けたいのは、「良くなった/悪くなった」の原因が特定できない状態です。だから1変数ずつ動かす。まず土台だけを、中身を1文字も変えずに移す。コンテンツの手入れは、その後で別に行う。
この「1文字も変えない」は、努力目標ではなく、移行のハード制約として最初に決めました。
何を、どう移したか(実データ)
移した規模は、次の通りです。
- URL を1文字も変えずに(スラッグも階層もトレイリングスラッシュも現状のまま)移行
- 移行後、全 288 URL について「HTTP 200 で返るか」「タイトルが元と一致するか」「本文が元と一致するか」「noindex が正しく再現されているか」を、機械検証スクリプトで全件チェックしました
結果は全項目パス。「移したつもり」で本文が欠けていたり、noindex が外れていたりすれば、検証が必ず赤で止まる作りにしてあります。人の目視だけに頼らず、機械が全件を照合した上で、初めて切り替えに進みました。
何が速くなったか(実データ)
土台を変えたことで、表示は明確に軽くなりました。
ただし、ここで強調しておきたいのは ── 「速くなった=順位や流入が回復する」ではない、ということです。表示速度は土台の話。それが検索での評価や受注導線にどう効いたかは、数字がたまってから、第6弾で答え合わせします。本記事の数字は、あくまで「移行で動いた事実」までです。
つまずいた3つと、その解き方
きれいに進んだわけではありません。特に切り替え当日は、いくつか手が止まりました。事実として起きたことと、解いた方法を残します。
1. メールが全損しかけた。 切り替え前に現状の DNS を実測したところ、メール(MX レコード)の宛先が自ドメイン自身に向いていました。このまま何も考えずネームサーバーだけ切り替えると、受信メールの宛先が新しいホスティング側に向いてしまい、メールが届かなくなる構成でした。以前、別サイトの移行でドメイン周りの事故を経験していたので、ここは慎重に。メール専用のレコードを別途立て、MX の宛先をそこに張り替えてから進めました。
2. 「まだ古いサイトが表示される」と一度誤認した。 切り替え後、手元のパソコンからは古い WordPress が表示され続けました。一瞬ヒヤリとしましたが、原因は自分の回線の DNS キャッシュ(古い住所を一時的に覚えている)でした。配信元を明示して確認し直すと、新サイトは正しく表示されていました。「表示されない」と焦って余計な操作をせず、切り分けてから判断したのが正解でした。
3. 表示先が古いサーバーのまま残っていた。 移行ツールが自動で取り込んだ設定の中に、古いサーバーを指す住所が1つ残っており、それが優先されて古いサイトが配信され続けていました。この住所を、新しい配信先を指す形に置き換えて解決。切り替え作業は「設定を入れる」だけでなく「余計な古い設定が残っていないか」の確認まで含めて、ようやく完了します。
いずれも、推測で先に進めず、事実を確認してから一手ずつ動かしました。ダウンタイム(サイトが見られない時間)はゼロで切り替えを終えています。
AI にどこまで任せ、どこを人が持ったか
第4弾で、「AI を使っても、記事の責任は人間側に残る」と書きました。今回の移行は、それを実装で確かめる機会にもなりました。変換・検証・デプロイといった手を動かす作業の多くは AI(Claude Code)に任せ、私は判断を持ちました。実際に、人が最後まで持った判断は次の3つです(起きたことの記録です)。
- 「URL を1文字も変えない」を最初に決め、ハード制約として最後まで死守した。 ここがズレると、これまで積み上げた検索評価も、他サイトからのリンクも無効になります
- ネームサーバーの切り替えは、実行の前に必ず人が確認してから押した。 自動化できる工程でも、本番のドメインを切り替える最後のひと押しは、機械任せにしませんでした
- 公開(publish)は、一貫して人の GO の後にのみ実行された。 移行から今回の記事運用に至るまで、AI が自分の判断で勝手に公開したことは一度もありません
63%減の入口は、無確認のまま公開を重ねたことでした。だから土台を作り替えた後の運用も、「機械的なチェックを全部通す」ことと「公開の GO は人が出す」ことの両方を、仕組みとして残しています。
この記事は「観測開始」まで
移行前に、検索の状態のスナップショットを控えてあります。
第6弾では、移行後の順位・流入・noindex 38記事の推移を、このスナップショットと突き合わせます。
基盤を変えても、63%減が自動で戻るわけではありません。戻すのは基盤ではなく、この土台の上に、どんな記事を、どんな役割で置くか。その答え合わせを、次回、数字とともに。
(第6弾「定点観測編」へ続く)